台風13号の接近で開催が危ぶまれた8月8日の熱海海上花火大会は、3カ所から打ち上げる通常のスタイルを取りやめ、1カ所からまとめて5000発を連射するという英断で観衆を魅了しました。 通常は熱海港北防波堤をメーン会場にナナハン岸壁とヘリポート近くの県用地から打ち上げる。しかし、午後3時42分に満潮を迎えた熱海湾では、その時間帯に北防波堤に越波があり、花火の設置ができなかった。こういうケースでは、ナナハン岸壁と県用地で実施してきましたが、今回は主催者の熱海温泉ホテル旅館協同組合の目黒敏男理事長が中島幹雄市観光協会会長と協議。あえてナナハン岸壁を使わず、県用地の1カ所で5千発を打ち上げることにしました。
3カ所から打ち上げるのは、ゴージャス感を演出することもありますが、煙が花火を見えにくくするのを防ぐため。この夜は台風の接近で強い風が吹き、1カ所からでも十分と判断しました。
背景にあるのが、高波の風評被害。7月末の台風12号の被害が衝撃的に報じられ、この日も多くのテレビ局が熱海湾を取材。「多くのホテル旅館でキャンセルが出ており、それを払拭するためにも花火で熱海の元気さをアピール必要があったとの事。1カ所から5千発を立て続けに打ち上げるのは初めてでした。最高の花火を提供することができたと思う」と目黒理事長。ピンチをチャンスに変える逆転の発想で熱海観光の底力を全国に見せつけました。
台風の影響で国道135号線の上多賀地区が通行止めになり、網代温泉からの送迎バスが心配されたが、南熱海網代温泉協同組合が総力を挙げて旧道を使って迂回するなどして7台のバスを予定通りに熱海港前に到着させ、こちらも経験に裏打ちされた底力を発揮しました。